実践ガイド
注文書の電子署名:法的な効力を支えるもの
展示会では、注文書への署名はいまやタブレットに指で行うのが一般的です。注文書の電子署名は証拠として認められますが、その証明力はブランドが何を証明できるかで決まります。eIDASのレベル、民法典の条文、署名の時点で記録すべき要素など、争われた注文を守るために必要なことを解説します。
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この記事のポイント
- タブレットに指で書いた単純電子署名も、裁判で証拠として認められます。電子的であるという理由だけで、その効力を否定することはできません。
- 信頼性が推定されるのは適格電子署名だけです。それ以外の署名では、誰が、何に、いつ署名したかをブランドが証明しなければなりません。
- 証明の土台となるのは証拠ファイルです。署名者の身元、文書のハッシュ値、サーバーのタイムスタンプ、表示された同意文がそろっている必要があります。
- 証拠ファイルのないまま、PDFに貼り付けた署名画像は、取引先に争われればほとんど何も証明しません。
展示会から6か月後、取引先が注文に異議を唱えたとします。商談の場では、営業担当者のタブレットに、ペンと同じ動作で署名していました。しかし、その筆跡だけでは争いに決着はつきません。注文書の法的な効力は、ブランドが何を証明できるかにかかっており、その証拠は紛争の日ではなく、署名の時点でつくられます。本記事は一般的な目安を示すものです。紛争の際は弁護士にご相談ください。
eIDASとフランス民法典は電子署名について何を定めているか
欧州連合では、eIDAS規則(規則(EU) No 910/2014、2024年に規則(EU) 2024/1183により改正)が電子署名を3つのレベルに分けています。あわせて、ひとつの原則も定めています。電子署名は、電子的な形式であること、または適格電子署名でないことだけを理由に、その法的効力や証拠としての許容性を否定されない、という原則です。手書きの署名と同等の効力を持つのは、適格電子署名だけです。
フランス法も同じ考え方をとっています。民法典第1366条は、作成者を特定でき、かつ完全性を保証する条件のもとで作成・保存されていることを条件に、電子文書に紙の文書と同じ証明力を認めています。第1367条は、電子署名を、行為との結びつきを保証する信頼できる本人確認の手段と定義しています。その信頼性が推定されるのは、適格電子署名の場合だけです。
単純・高度・適格:eIDASが定める3つのレベル
| レベル | 求められる要件 | 紛争になった場合 | ホールセールでの主な用途 |
|---|---|---|---|
| 単純電子署名 | 署名者が文書に関連づけた電子データ | 証拠として認められるが、信頼性はブランドが証明する | タブレットやオンラインで署名する注文書 |
| 高度電子署名 | 署名者と一意に結びつき、署名者だけが管理でき、その後の改変を検知できること | 証拠として認められるが、信頼性の証明は必要 | 基本契約、個別に交渉した特約条件 |
| 適格電子署名 | 適格な署名生成装置と、本人確認を経て発行された適格証明書を用いて作成した高度電子署名 | 手書きの署名と同等で、信頼性が推定される | 重要度の高い文書、または法令で求められる文書 |
事業者間の注文書では、単純電子署名が標準です。すばやくその場で済み、取引先に証明書もアプリも求めません。なおフランスでは、商人間の証拠は自由とされています(商法典L110-3条)。したがって注文の効力は、署名に添える情報の質で決まります。
単純電子署名は、たとえばデジタルショールームでのプレゼンテーションのあとにオンラインで署名する注文書にも使えます。その場合も、証拠は展示会と同じ要素で成り立ちます。
証拠ファイル:署名の時点で記録すべき4つの要素
取引先が注文に異議を唱えたとき、ブランドは4つの問いに答えられなければなりません。それぞれが、後からではなく署名の時点で記録すべき要素に対応しています。
- 誰が署名したか。署名者の氏名、メールアドレス、肩書き、認証の経路、IPアドレス、使用した端末。
- 何に署名したか。注文内容そのもののハッシュ値(たとえばSHA-256)。内容がわずかでも後から変更されれば、値が変わります。
- いつ署名したか。サーバーが付与するタイムスタンプ。数回の操作で変更できるタブレットの時計に頼ってはいけません。
- 同意したか。署名の前に署名者に表示した文言を、そのままの形で保存すること。単なる「チェック済み」の記録では足りません。
この証拠ファイルは改変できない記録として保存し、いつでも参照できるようにしておく必要があります。これらの要素をまとめ、注文の完全性を検証できる読みやすい証明書があれば、取引先、信用保険会社、弁護士にも簡単に提出できます。署名済みの同じ注文書は、合意した支払条件の根拠にもなります。詳しくはホールセールの前払金と支払期日のガイドをご覧ください。
スキャンした署名、編集できるPDF:証拠にならないもの
よく見られるいくつかの方法では、異議を唱えられたときにブランドは身を守れません。
- PDFに貼り付けた署名画像。フランス破毀院は、スキャンした署名は、その方法自体が有効であっても、第1367条にいう信頼性が推定される電子署名と同一視することはできないと判断しています(破毀院商事部、2024年3月13日、n° 22-16.487)。
- 署名後も編集でき、改変を検知するハッシュ値のないPDF。
- 営業担当者や取引先の端末から取得した日時。
- 商談で提示したものとは別の文書に、後から「清書」として署名した注文。
展示会で注文書に署名する:5つの実践ルール
ブースでは営業担当者が商談を次々にこなし、混雑する時間帯にはネットワークが弱くなります。次の5つのルールは、販売の勢いを落とさずに証拠を守ります。
- 署名の前に、数量、価格、値引き、納期、取引条件を含む注文内容の全体を確認してもらう。
- 署名欄に書き込む前に、取引先の言語で同意文を表示する。
- 署名済みの注文書の控えを、すぐに取引先へ送る。
- 会場のネットワークが混雑しても、証拠を失わずに動く仕組みを用意しておく(展示会の準備の方法を参照)。
- 注文書と証拠ファイルは、商人間の時効期間である少なくとも5年間(フランス商法典L110-4条)、会計証憑として使う場合は10年間保存する。
注文書の電子署名に切り替える:何から始めるか
紙の注文書を電子署名に置き換えることは、ホールセールのデジタル化のなかでも特に費用対効果の高い取り組みです。再入力が減り、ミスが減り、カーボン複写の用紙よりも確かな証拠が残ります。事業者間の注文書であれば、きちんと記録された単純電子署名で多くの場合は十分です。取り組むべきは、署名に添える証拠ファイルです。身元、ハッシュ値、サーバーのタイムスタンプ、同意文を同じ処理のなかで記録し、少なくとも5年間保存します。
ツール選びはその次です。紙、Excel、それともプラットフォームの比較記事で受注方法の全体像をつかみ、B2B受注ソフトを選ぶ12の基準でソリューションを比較できます。
よくあるご質問
タブレットに書いた署名に法的な効力はありますか?
あります。これは単純電子署名にあたり、証拠として認められ、電子的であるという理由だけで効力を否定されることはありません。その証明力は、添えられた証拠ファイルによって決まります。
注文書には適格電子署名が必要ですか?
ほとんどの場合、必要ありません。事業者間では証拠は自由であり、きちんと記録された単純電子署名で多くの場合は十分です。適格電子署名は、重要度の高い文書や、法令で求められる場合に検討します。
スキャンした署名は電子署名になりますか?
ブランドが頼れる署名にはなりません。文書に挿入した署名画像は、署名者の身元も文書の完全性も保証しません。フランス破毀院は、これを信頼性が推定される電子署名と同一視することはできないと判断しました(破毀院商事部、2024年3月13日、n° 22-16.487)。取引先が争えば、その価値はブランドが示せるほかの証拠しだいです。
署名済みの注文書はどのくらいの期間保存すべきですか?
商人間の時効期間である少なくとも5年間、注文書を会計証憑として使う場合は10年間です。注文書は証拠ファイルとあわせて保存しましょう。
単純電子署名と適格電子署名の違いは何ですか?
単純電子署名は、電子データを文書に関連づけるものです。証拠として認められますが、信頼性はブランドが証明しなければなりません。適格電子署名は、適格な署名生成装置と、本人確認を経て発行された適格証明書を用いて作成した高度電子署名です。手書きの署名と同等とされ、信頼性が推定されます。
出典
- Règlement (UE) n° 910/2014 sur l’identification électronique et les services de confiance (eIDAS) — EUR-Lex
- Guide de sélection des niveaux de signature électronique (eIDAS) — ANSSI
- Code civil, articles 1363 à 1368 : preuve par écrit et signature électronique — Légifrance
- La signature scannée : une preuve insuffisante — Addleshaw Goddard