実践ガイド
ホールセールの最低発注量(MOQ):適正な水準に設定し、守ってもらう方法
ホールセールの最低発注量が高すぎれば小さなセレクトショップを遠ざけ、低すぎれば利益より手間のかかる注文で受注台帳が埋まります。適正な基準は計算式で求め、金額か点数で示し、追加発注や海外取引に合わせて調整し、署名の前に表示するものです。
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この記事のポイント
- 最低発注量は利益を守るための仕組みです。注文には、金額の大小にかかわらず一定の処理コストがかかるからです。
- 金額で決めるか、点数で決めるか。前者は採算を、後者は店頭での商品の存在感を守ります。両方を組み合わせるブランドも少なくありません。
- 初回発注、追加発注、カテゴリー、国ごとに基準を変えるほうが、一律の最低発注量より公平な場合が多くあります。
- 最低発注量は署名の前に示す必要があります。署名の後で知らされれば、注文と取引先の信頼の両方を失います。
- 例外を認めることもできます。ただし、適切な担当者が判断し、その記録を残すことが条件です。
「最低発注量はいくらですか?」展示会のブースで初めてブランドに出会ったバイヤーは、商品を手に取る前からこう尋ねることがよくあります。その答えが、シーズンの一部を左右します。高すぎれば、デザイナーズブランドの評判を築いてくれる小さなセレクトショップを締め出してしまいます。低すぎたり、運用があいまいだったりすれば、利益より手間のかかる少額の注文で受注台帳が埋まってしまいます。取引先を失わずに、最低発注量を決め、伝え、守ってもらう必要があります。
最低発注量(MOQ)とは?
最低発注量は、MOQ(Minimum Order Quantity)とも呼ばれ、ブランドがそれを下回る注文を受け付けない基準のことです。金額(たとえば税抜500ユーロ)か点数(たとえば12点)、あるいはその両方で示します。
工場がブランドに課す最小生産ロットと混同してはいけません。テーマは似ていますが、こちらはサプライチェーンの反対側、ブランドと製造業者のあいだで交渉されるものです。関連する用語はホールセール用語集で解説しています。
ブランドが最低発注量を設ける理由
最低発注量は、4つの異なるニーズに応えるものです。その重みは、ブランドの規模やコレクションの性質によって変わります。
- 1件の注文にかかる固定費をまかなうため。入力、確認、ピッキング、梱包、請求しない送料、請求書発行、督促などです。
- 店頭で実際に存在感を出すため。売場に埋もれた2点の商品は売れず、ブランドの印象も弱くなります。
- 生産を確実にするため。注文数量の合計が、工場の最小ロットに届く必要があります。
- コレクションをしっかり展開してくれる取引先に、営業の力を集中させるため。
金額の最低発注量は利益を守り、点数の最低発注量は店頭での存在感を守る
| 比較項目 | 金額による最低発注量 | 点数による最低発注量 |
|---|---|---|
| 守るもの | 1件ごとの注文の採算 | 店頭での商品の見え方 |
| バイヤーにとってのわかりやすさ | すぐに理解でき、ブランド間で比較しやすい | 価格帯がそろったラインなら簡単 |
| 弱点 | 高額な商品が数点あれば達してしまう | 安価な商品で、採算が取れないまま達してしまう |
| 向いているケース | 価格帯の幅が広いライン | 価格帯がそろったライン、アクセサリー、小物 |
たとえば「税抜500ユーロ以上、かつ12点以上」のように2つのルールを組み合わせれば、両方のリスクをカバーできます。コート3点だけでも、安価な小物12点だけでも、基準に届かなくなります。それでもルールは、営業担当者がブースで口にする一文で説明できるほどシンプルでなければなりません。
ホールセールの最低発注量の計算方法
同業者から聞いた数字ではなく、実際の注文処理コストから出発しましょう。入力と確認、ピッキングと梱包にかかる時間、請求しない送料、請求書の発行、入金の管理を合計します。そのうえで、この固定費に粗利のどれだけを充ててもよいかを決めます。
- 最低発注量 = 1件の注文の固定費 ÷(粗利率 × その費用に充ててよい粗利の割合)。
- 例:1件の処理に60ユーロかかり、粗利が卸価格の50%、その費用に充てる粗利を最大20%までとする場合、60 ÷(0.50 × 0.20)= 税抜600ユーロ。
- 検算:600ユーロの注文から得られる粗利は300ユーロで、処理費60ユーロはちょうどその20%にあたります。
同じ計算で、基準を低く設定しすぎた場合のコストもわかります。最低発注量が税抜500ユーロで粗利率が同じ50%なら、基準ちょうどの注文の粗利は250ユーロで、処理費60ユーロがその24%を占めます。
次に、算出した基準が、1店舗にとって現実的なセレクションに見合っているかを確認します。目安は2〜3型、各2色、サイズを一通りそろえた程度です。それ以上を求める基準では、小規模な店舗を遠ざけてしまいます。サイズ配分についてはサイズカーブとプリパックのガイドで詳しく解説しています。粗利そのものは卸価格によって決まります。詳しくは卸価格の計算方法をご覧ください。
最低発注量は1つにすべきか、複数にすべきか
一律の最低発注量はシンプルですが、公平とは限りません。運用を見直しているブランドの多くは、次の4つの要素で調整しています。
- 初回発注と追加発注:新規口座の開設は追加発注よりコストがかかるため、追加発注の基準は低くしてもかまいません(シーズン中の追加発注を参照)。
- 商品カテゴリー:点数による最低発注量の意味は、コートとジュエリーでは大きく異なります。
- 店舗:複数店舗を持つチェーンには、全体ではなく店舗ごとの最低発注量を設けることもできます。
- 国:海外取引では輸送費や手続きの負担が大きいため、基準を高めに設定する理由になります(海外向けホールセールを参照)。
最低発注量と送料無料ライン:関門と動機づけ
最低発注量は「関門」です。基準に届かなければ注文は成立しません。送料無料ラインは「動機づけ」です。一定額を超えると、ブランドが送料を負担します。多くのブランドは、取引を始めやすいよう最低発注量を控えめにし、より大きな注文を促すために送料無料ラインを高めに設定しています。
この2つの基準は、同じ場所に、同じ数字で示しましょう。ラインシートと取引条件で異なる送料無料ラインを目にしたバイヤーの記憶に残るのは、その食い違いです。
最低発注量は署名の前に表示する
注文の確定時、さらには署名の後になって知らされる最低発注量は、二重の損失を生みます。注文そのものと、バイヤーの信頼です。ラインシートや取引条件に記載するのはもちろん、何より注文入力の最中に、あとどれだけ足りないかを単位とともに表示しましょう。
なおフランスでは、一般販売条件(CGV)を定めているブランドは、求めがあればすべての事業者バイヤーにそれを提示しなければなりません(フランス商法典L441-1条)。最低発注量を明記する基準となる文書であり、前払金と支払期限の条件と並べて記載します。
最低発注量を下回る注文を受けるべきとき
大きな可能性を秘めた店舗、新しい国での初めての試み、厳しいシーズンを迎えている長年の取引先。例外が正当化される場面はあります。ただし、それはあくまで「判断」であり、決して「見落とし」になってはなりません。誰が例外を認められるかを決め、理由を求め、記録を残しましょう。次のシーズンには、なぜその取引先が基準を下回る注文をしたのか、そしてその判断が報われたのかがわかります。
最低発注量を形骸化させる5つの失敗
- 実際の注文処理コストを知らないまま、他社をまねて最低発注量を決める。
- 資料に記載した最低発注量と、受注ツールで適用している最低発注量が異なる。
- 取引先の署名が済んでから、最低発注量を確認する。
- 口頭で例外を認め、後から誰もたどれなくなる。
- 初回発注、追加発注、海外取引に同じ基準を適用する。
次の受注シーズンまでに進める手順
まず、1件の注文処理コストを項目ごとに数字で把握し、計算式から基準を導きます。次に、それを小規模店舗の典型的なセレクションと照らし合わせ、追加発注、海外取引、必要なカテゴリーごとに調整します。最後に、ラインシート、取引条件、受注ツールに同じ数字を記載し、例外を認める担当者を決めておきましょう。
よくあるご質問
立ち上げたばかりのブランドは、最低発注量をいくらに設定すべきですか?
実際の注文処理コストと自社の粗利から出発し、その基準が小さな店舗にとって現実的なセレクション、つまり数型、2色、サイズ一通りに見合っているかを確認しましょう。最低発注量が高すぎると、ブランドの評判を築いてくれる店舗を締め出してしまいます。
最低発注量は金額と点数のどちらで示すべきですか?
金額は採算を守り、点数は店頭での商品の存在感を守ります。多くのブランドは、たとえば「税抜500ユーロ以上、かつ12点以上」のように両方のルールを組み合わせています。ただし、説明しやすいシンプルさを保つことが条件です。
追加発注にも同じ最低発注量を適用すべきですか?
必ずしもそうではありません。追加発注は新規口座の開設より処理コストが低くなります。基準を下げれば、取引先がシーズン中に再発注しやすくなります。
最低発注量と送料無料ラインの違いは何ですか?
最低発注量は、それを下回ると注文を受け付けない基準です。送料無料ラインは、それを超えるとブランドが送料を負担する金額であり、関門ではなく動機づけにあたります。
最低発注量はどのように計算しますか?
1件の注文の固定費を、粗利率とその費用に充ててよい粗利の割合を掛け合わせた値で割ります。処理費60ユーロ、粗利率50%、充当できる粗利の割合20%なら、最低発注量は税抜600ユーロになります。
出典
- 受託適正取引等推進のためのガイドライン(取引適正化ガイドライン) — 中小企業庁
- Code de commerce, article L441-1 — Légifrance
- Conditions générales de vente : les mentions obligatoires (fiche pratique) — DGCCRF
- Conditions générales de vente entre professionnels — CCI Paris Île-de-France
- Franco de port (Grand dictionnaire terminologique) — Office québécois de la langue française