用語集
ホールセール用語集:バイヤーと同じ言葉で話すための70以上の用語
MOQ、プレパック、sell-through、open-to-buy、送料無料ライン、早期支払割引、EORI。BtoB販売では、英語由来の略語が飛び交います。このホールセール用語集では、販路から取引先の販売管理まで、70以上の用語をテーマ別に定義しました。バイヤー、エージェント、フォワーダーと誤解なく交渉し、受注し、請求するための一冊です。
12分で読めます ·
この記事のポイント
- ホールセールには独自の用語があり、その多くは英語由来です。この用語集では70以上の用語を6つのテーマに分けてまとめています。
- 混同しやすい組み合わせがいくつかあります。コレクション受注と追加発注、sell-inとsell-through、ラインシートとルックブック、マークアップ率と粗利率です。
- 前払い金、与信残高、支払期限、早期支払割引といった財務用語は、ブランドの資金繰りを左右します。
- 海外取引では、インコタームズ、HSコード、EORI番号によって誰が何を負担するかが決まり、通関がスムーズに進むかどうかも左右されます。
展示会のブースで、バイヤーは値札を裏返すより先に、MOQ、キャンセル期日、インコタームズを尋ねてきます。そのうちの一語でも答えに詰まれば、営業担当は時間を失い、ときには注文そのものを失います。エージェント、バイヤー、ショールーム、工場、フォワーダーは、略語と英語まじりのこの言葉を共有しています。
この用語集では、それらをテーマごとに定義し、各テーマを詳しく扱うガイドへご案内します。全体像を知りたい方は、デザイナーズブランドの卸売(ホールセール)市場の解説もあわせてお読みください。
販売と販路のホールセール用語:誰が買い、誰が売り、どの経路を通るか
ここでは、ホールセールの2つのリズムである先行予約と追加発注、そしてコレクションを店頭まで届ける仲介者に関する用語を整理します。
- ホールセール(卸売)
- ブランドが自社商品をプロの小売業者に販売し、小売業者がそれを最終消費者に再販売する取引形態。
- リテール(小売)
- 店舗やオンラインで、最終消費者に直接販売すること。
- コレクション受注(先行予約)
- 受注期間中、生産前に受ける注文で、翌シーズンに納品されます。
- 追加発注(リオーダー)
- シーズン中に、すでに在庫のある商品について追加で受ける注文。詳しくはホールセールの追加発注をご覧ください。
- 受注期間
- 展示会、ショールーム、個別商談などで、コレクションをバイヤーに提案し販売する期間。
- バイヤー
- 店舗やチェーンのために商品を選定し、発注する担当者。
- マルチブランド店
- ブランドの直営店とは異なり、複数ブランドの商品を扱う店舗。
- コンセプトストア
- ひとつの世界観やライフスタイルを軸に、複数カテゴリーの商品をセレクトするマルチブランド店。
- 百貨店
- 売場ごとに構成された大型のマルチブランド店で、カテゴリー別に独自の仕入れチームを持ちます。
- 店舗(door)
- 取引先の実店舗。ひとつのチェーンが複数の店舗を持ち、それぞれに数量と納品先住所があることもあります。
- 販売エージェント
- 一定の地域で1つまたは複数のブランドに代わって商談を行う独立した仲介者。報酬は手数料制で、商品を買い取りません。
- ディストリビューター
- 自らの勘定で商品を買い取り、一定の地域で再販売する企業。在庫リスクと与信リスクを負います。
- 輸入代理店
- 仕向国に拠点を置くディストリビューターで、通関手続きや現地物流を担うことが多い存在です。
- ショールーム
- コレクションをバイヤーに見せる常設または期間限定の場所。ブランド自身または第三者が運営します。
- 展示会
- ブランドがコレクションを展示し、注文を受ける業界関係者向けのイベント。詳しくは展示会の準備の手順をご覧ください。
- BtoBマーケットプレイス
- 多数のブランドと多数の小売業者を、独自のルールと条件で結びつけるプラットフォーム。
- BtoB受注ポータル
- ブランド専用の受注サイト。取引先はそこでコレクションを閲覧し、自社の取引条件で発注します。詳しくはマーケットプレイスか自社ポータルかの比較をご覧ください。
- 委託販売
- 小売業者は売れた分だけを支払い、在庫の所有権はブランドに残り、売れ残りはブランドが引き取る方式。
- プライベートブランド(PB)
- ブランドや工場が製造し、小売業者のブランド名で販売される商品。
コレクションと商品:サンプルから納品期間まで
ホールセールのコレクションは、店頭に並ぶずっと前に、資料とサンプルで販売されます。
- ラインシート
- コレクションの各品番を、画像、カラー、サイズ、価格とともに掲載した営業資料。詳しくはラインシートとはをご覧ください。
- ルックブック
- コレクションの世界観やスタイリングを伝えるイメージ写真集。デジタル版で配信されることも増えており、たとえばLookbook Studioで作成できます。
- 商品画像(packshot)
- 無地の背景で商品単体を撮影した写真。カタログやラインシートに使われます。
- サンプル
- 生産に先立ち、バイヤーに見せるために先行して製作されるコレクションの商品。
- 品番(SKU)
- カラーとサイズごとに展開される、商品の固有識別コード。
- カラー
- あるモデルの色違い。独自の品番を持ち、価格が異なることもあります。
- サイズグリッド
- あるモデルで展開されるサイズの一覧。発注時にマスごとに数量を入力します。
- サイズ構成比
- サイズごとの数量配分。たとえばS 1点、M 2点、L 2点、XL 1点の計6点で、店舗の客層を反映します。
- プレパック
- サイズやカラーをあらかじめ組み合わせ、1単位として販売するセット。発注を速め、サイズ構成比を守るために使います。詳しくはサイズ構成比とプレパックをご覧ください。
- 定番(キャリーオーバー)
- シーズンをまたいで継続されるモデル。通年で追加発注できることが多い商品です。
- プレコレクション
- メインコレクションより前に発表され、店頭への納品も早いコレクション。
- カプセルコレクション
- 2つの主要シーズンとは別に発表される、小規模な限定コレクション。
- 納品期間(デリバリーウィンドウ)
- ブランドが注文の納品を約束する期間。たとえば1月15日から2月15日まで。
- キャンセル期日(cancel date)
- 注文条件で定められた、それ以降は小売業者が遅れた納品を拒否できる期日。
価格と利益:収益性が決まるところ
製造原価から店頭の値札までの間で、関係者それぞれが自分の取り分を得ます。
- 卸価格
- ブランドが小売業者に販売する税抜価格。詳しくは卸価格の計算方法をご覧ください。
- 希望小売価格(RRP)
- ブランドが消費者への販売価格として推奨する価格。最低再販売価格の強制は禁止されているため、あくまで推奨にとどまります。
- 製造原価
- ブランドの倉庫に届くまでに1点にかかる費用の総額。素材、縫製、輸送、関税、開発費の一部を含みます。
- 倍率
- 販売価格と仕入価格の比率。ブランドの倍率は製造原価と卸価格を、小売業者の倍率は卸価格と店頭価格を結びます。
- マークアップ率
- 利益額を税抜の仕入原価で割った比率。
- 粗利率
- 利益額を税抜の販売価格で割った比率。同じ利益額なら、常にマークアップ率より低くなります。
- 価格表
- 国、通貨、取引先ごとに適用される卸価格の一覧。
- 値引き
- 数量、早期発注、特定の取引先などを理由に卸価格から差し引く額。ブランドの利益から出ます。
- 早期支払割引
- 期日前の支払いと引き換えに認める割引。
注文と支払い:約束し、資金を動かす言葉
ホールセールの注文は双方を拘束し、納品前に資金が動くことも少なくありません。資金繰りについてはホールセールの前払い金と支払期限のガイドをご覧ください。
- 注文書
- 取引先が何を、いくらで、どの条件で、どの納品として注文するかを定める書類。署名されると双方を拘束します。
- 電子署名
- 署名者を特定し、署名した文書と結びつける手段。詳しくは注文書の電子署名をご覧ください。
- MOQ
- Minimum Order Quantity(最低発注量)。金額または点数で表され、ブランドや工場が定めます。詳しくは最低発注量の決め方をご覧ください。
- 送料無料ライン
- この金額を超えるとブランドが送料を負担する、注文金額の基準。
- 一般販売条件(CGV)
- ブランドの販売を律するルール。価格表、割引、支払条件に加え、配送、返品、最低発注量を定めることも多くあります。フランスでは、求めのあったすべての事業者の買い手に提示しなければなりません。
- 前払い金(デポジット)
- 生産を確実にするため、多くは発注時に前もって支払う注文金額の一部。
- プロフォーマ請求書
- 注文内容をまとめた事前の書類で、請求書としての効力はありません。前払い金の請求や通関の準備に使います。
- 支払条件
- 取引先に認める支払いの期限と方法。たとえば発注時、納品時、30日後など。
- 支払期限
- 取引先が請求書を支払うまでの猶予。フランスの事業者間では、一般原則(商法典L441-10条)により請求書発行日から60日以内、契約で定めれば月末締め45日以内が上限です。一部の季節性の強い業種や、EU域外への輸出向けの購入には特別な規定があります。
- 与信残高
- ある時点で取引先がブランドに負っている総額。認められた与信枠と比較して管理します。
- 残納(バックオーダー)
- 納品できなかった注文の一部。後日納品されるか、取引先の同意を得てキャンセルされます。
- クレジットノート
- 返品や事後の値引きなどの際に、請求書を取り消したり減額したりする書類。
物流と海外取引:輸送費と関税を誰が払うか
注文が国境を越えた瞬間から、誰が輸送を手配し、誰がリスクを負い、誰が関税を支払うのかを決めておく必要があります。
- インコタームズ
- 国際商業会議所(ICC)が定める国際規則で、輸送費、保険料、関税を誰が負担し、どの時点でリスクが移転するかを定めます。現在有効なのは2020年版で、ICCは次の改訂版「インコタームズ2030」を準備中です。詳しくは海外向けホールセールをご覧ください。
- EXW(工場渡し)
- ブランドが自社の施設で商品を引き渡せる状態にし、それ以外はすべて買い手が手配・負担するインコタームズ。
- FCA(運送人渡し)
- ブランドが輸出通関を済ませた商品を、自社の施設またはほかの合意した場所で、買い手が指定した運送人に引き渡すインコタームズ。引き渡しの時点でリスクは買い手に移り、主たる輸送費も買い手が負担します。
- DAP(仕向地持込渡し)
- ブランドが合意した場所まで届け、輸入通関と関税は買い手が負担するインコタームズ。
- DDP(関税込持込渡し)
- ブランドが輸入通関と関税を含め、仕向地までのすべてを負担するインコタームズ。
- HSコード
- 国際的な関税分類(統一システム)のコード。商品ごとに分類し、適用される関税率を決めます。
- EORI番号
- EU域内で通関手続きを行うすべての事業者に義務づけられている識別番号。
- EU域内VAT
- EU加盟国の異なる事業者間では、原則としてVATを含めずに請求し、買い手が自ら税を申告・納付する制度(リバースチャージ)。有効なVAT番号が前提です。
- 販売可能在庫(ATS)
- まだどの注文にも引き当てられておらず、追加発注向けに提案できる在庫数量。
- パッキングリスト
- 出荷の各梱包の中身を明細にした書類。取引先の検品や税関で役立ちます。
経営管理:取引先で何が売れているかを測る
商品を納めたあとは、これらの指標で店頭から売れているかどうかを確かめます。
- Sell-in
- ブランドから取引先小売業者への販売。
- Sell-out
- 小売業者から最終消費者への販売。
- Sell-through(消化率)
- 小売業者が仕入れた商品のうち、一定の期間に消費者へ販売された割合。詳しくはsell-throughとopen-to-buyをご覧ください。
- Open-to-buy(オープン・トゥ・バイ)
- ある期間やシーズンについて、バイヤーにまだ残っている仕入予算。
- 在庫カバー週数
- 現在の販売ペースで、手元の在庫が何週間分の販売をまかなえるかを示す数値。
- 値下げ(マークダウン)
- シーズン中またはシーズン末に行う値下げ。盗難、紛失、ミスによる棚卸減耗(ロス)とは別物です。
- 平均注文額
- 期間、展示会、取引先ごとに計算した1注文あたりの平均金額。
- 欠品率
- 求められた品番のうち、すでに在庫切れになっているものの割合。
- 追加発注率
- あるシーズンの取引先のうち、シーズン中に再び発注した取引先の割合。
初めての受注シーズンを準備するブランドなら、進め方はシンプルです。まず卸価格と倍率を決め、次に最低発注量と送料無料ライン、最後に支払条件と前払い金を決めて、一般販売条件に明記します。物流や経営管理の用語は、最初の納品とともに身についていきます。
よくあるご質問
sell-inとsell-throughの違いは何ですか?
sell-inはブランドが取引先小売業者に販売した量を表します。sell-throughは、その商品のうち小売業者が一定期間に消費者へ販売した割合を表します。
MOQとはどういう意味ですか?
MOQはMinimum Order Quantityの略で、最低発注量のことです。金額または点数で表され、ブランドが定めることも工場が定めることもあります。
先行予約と追加発注の違いは何ですか?
先行予約は、まだ生産されていないコレクションを受注期間中に翌シーズン向けとして販売するものです。追加発注は、すでに在庫のある商品をシーズン中に注文するものです。
マークアップ率と粗利率の違いは何ですか?
マークアップ率は利益を税抜の仕入原価で割り、粗利率は税抜の販売価格で割ります。そのため、同じ利益額なら常にマークアップ率のほうが粗利率より高くなります。
DAPとDDPの違いは何ですか?
DAPでは、ブランドは仕向地まで届けますが、輸入通関と関税の支払いは買い手が行います。DDPでは、ブランドが輸入通関と関税まで負担します。
open-to-buyとはどういう意味ですか?
open-to-buyは、ある期間やシーズンについてバイヤーにまだ残っている仕入予算を指します。ブランドにとっては、その取引先がその期間にあとどれだけ発注できるかを示す目安になります。
出典
- インコタームズ2020 — 日本貿易振興機構(ジェトロ)
- これがわかれば達人!【FB用語解説】すっかり業界人編 — 繊研新聞
- From margins to sell-through: Important figures used in the fashion industry — FashionUnited
- Incoterms® 2020 — International Chamber of Commerce (ICC)
- Comment se crée la collection d’une marque de mode ? — FashionUnited France
- Article L441-10 - Code de commerce - Légifrance — Légifrance